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名古屋地方裁判所 平成4年(ワ)1029号 判決 1992年12月25日

原告

松原治彦

被告

吉田光正

ほか一名

主文

一  被告らは、原告に対し、各自金三九五万二一七五円及びこれに対する平成三年一一月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は五分し、その一を原告の、その余を被告らの各負担とする。

四  この判決は、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告に対し、各自金四七九万六八八二円及びこれに対する平成三年一一月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

(一) 日時 平成三年一一月二一日午後三時四〇分ころ

(二) 場所 岐阜県海津郡海津町油島官有無番地油島大橋先路上

(三) 加害車 普通貨物自動車(岐阜四六す五八五九)

(四) 右運転者 被告深川良輔(以下「被告深川」という。)

(五) 被害車 原告所有の普通乗用自動車(尾張小牧三三な八三一三、車名・アルファロメオ)

(六) 事故の態様 被告深川は、加害車を運転して前記場所を走行中、赤信号のため停車していた被害者の後部に追突し、原告は、咄嗟に前車への被害車の二次追突を避けるため、右に転把したので、同車は道路右側端の縁石に乗り上げて停車した。この事故により、被害車は後部を大破し、右前輪部等が損傷した。

2  責任原因

(一) 被告深川は、前方を注視して走行すべき注意義務を怠り、漫然と走行した過失により、本件事故を発生させたものである。

(二) 被告吉田光正(以下「被告吉田」という。)は、「岐阜楽器センター」の屋号で楽器等の販売業をしており、被告深川はその被用者であつて、本件事故はその事業の執行中に発生したものである。

3  損害

(一) 自動車修理費(二七六万五七〇四円)

原告は、被害車を下取りに出して新車を購入したが、本件事故後、大沢自動車販売株式会社に見積りを依頼したところ、その修理費の見積額は二七六万五七〇四円であつた。

(二) 評価額(一一〇万六二八二円)

被害車は、修理をしてもなお本件事故による価格の減少は避けられず、この価格の減少による評価損は右修理費の四割とみるべきである。

(三) 新車購入の諸費用(四三万二一三六円)

右被害車の本件事故による損傷部分の修理は可能ではあるが、被害車はイタリア車のため、修理部品の取り寄せに相当の期間を要し、国産車に比べ修理期間も極めて長くなり、しかも修理後も事故前と同程度の性能回復は見込めないばかりか、原告は、新車に乗りたくて、被害車を新車購入したのであるが、購入後二週間で本件事故に遭つてしまつたので、被害車を下取りに出し、再度アルファロメオの新車を購入した。その際の自動車取得税、自動車重量税等の諸費用は四三万二一三六円であつた。

(四) 雑費(五万六七六〇円)

(1) JAF(日本自動車連盟)支払分

本件事故当日、JAFに被害車の牽引等を依頼した費用は二万〇六〇〇円であつた。

(2) 事故当日のタクシー代

事故現場から一宮駅前付近までのタクシー代は五九四〇円であつた。

(3) 診療費

訴外栗野洋子は、本件事故当時、被害車に同乗していて本件事故に遭遇したので、事故による負傷の有無について受診した。その費用三万〇二二〇円を原告が負担した。

(五) 弁護士費用(四三万六〇〇〇円)

原告は、被告らが任意に本件損害の支払いをしないため、その賠償請求をするため、原告訴訟代理人に本件訴訟の提起及びその遂行を依頼したのであるが、弁護士費用は被害総額の一割に当る四三万六〇〇〇円が相当である。

4  よつて、原告は、被告らに対し、右損害金四七九万六八八二円及びこれに対する本件事故当日である平成三年一一月二一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否等

1  請求原因1、2は認める。

2  同3の(一)(二)(三)は否認するが、(四)は知らないし、(五)は争う。

被害車の修理費は一九九万一六六〇円が相当であるし、四割の評価損は過大である。

3  被告らは、本件事故当日、被害車の代車を原告に提供したが、原告は、被害車の修理に応じず、平成四年一月三一日まで右代車の使用を継続し、その代車費用は七一万三五一二円であつた、しかしながら、被告らが負担すべき代車費用は、修理に必要とみられる一か月分の二九万四七八六円であり、これを差し引いた四一万八七二六円は損害賠償額から控除されるべきである。

第三証拠〔略〕

理由

一  請求原因1(事故の発生)及び2(責任原因)の各事実は当事者間に争いがない。

二  損害について判断する。

1  自動車修理費 二七六万五七〇四円

証人林潔彦の証言とこれにより真正に成立したと認める甲第五号証によれば、本件事故により破損した被害車の修理費は二七六万五七〇四円であると認めるのが相当である。

もつとも、被告らは、被害車の修理費は一九九万一六六〇円が相当であると主張し、証拠として、自動車車両損害調査報告書等(乙第一号証、第三号証)を提出する他、証人佐藤徹も右主張に沿う証言をするが、他方、証人佐藤徹の証言により成立の認められる乙第一号証、原告本人尋問の結果により成立の認められる甲第二号証、第八号証、証人林潔彦の証言及び原告本人尋問の結果によると、原告は、本件被害車を五二〇万円で新車で購入し、納車後約二週間使用(走行距離一二一四キロメートル)しただけで本件事故に遭遇したものであつて、法定減価償却(六年)による事故時における被害車の時価は、新車価格の九六・八パーセントであること、原告は、あくまでも新車に乗りたいとの希望もあつて、結局、被害車を修理しないままこれを下取車として同一車種の自動車に買換えたのであるが、そのときの被害車の下取価格は一二〇万円であつたこと、以上の事実を認めことができ、この事実からすると、前掲各証拠による修理費が一九九万一六六〇円であるとする点は直ちに信用できないというべきである。

2  評価損 八二万九七一一円

我が国では事故歴のある車は、そのこと自体で商品価値が下落する実態があることは否定できず、前認定の走行期間、距離、事故直前の時価及び下取価格等を総合して本件被害車の事故当時の評価損を考えると、修理費の三割である八二万九七一一円を少くとも下回ることはないものと認められ、被害車の資産価値がそれだけ減少するのであるから、その評価損分については、被告らは、原告に賠償する責任がある。

3  新車購入の諸費用

事故車の修理に代えて新車購入を認めるのは、物理的にも、経済的にも修理が不能なとき、車体の本質的構成部分に重大損傷が生じたときなどに限られると解するべきであるところ、本件の場合、被害車が右に該当すると認めるに足りる証拠はない。したがつて、被害車の修理に代えての原告の新車購入諸費用は、本件事故による損害と認めることはできない。

4  雑費 五万六七六〇円

(一)  JAF(日本自動車連盟)支払分

原告本人尋問の結果とこれによつて成立を認め得る甲第六号証によれば、原告は、本件事故当日、JAF(日本自動車連盟)に被害車の牽引等を依頼し、その費用として二万六〇〇円を要したことが認められる。

(二)  事故当日のタクシー代

原告本人尋問の結果とこれによつて成立を認め得る甲第七号証によれば、原告は、本件事故後、事故現場から一宮駅前付近までタクシーを利用して帰つたのであるが、タクシー代として五九四〇円を要したことが認められる。

(三)  診療費

成立に争いのない甲第九号証及び原告本人尋問の結果によれば、訴外栗野洋子は、被害車に同乗していて本件事故に遭つたので、その後、負傷の有無につき松波総合病院において受診したのであるが、その費用三万〇二二〇円を原告が負担したことが認められる。

5  弁護士費用 三〇万円

弁論の全趣旨によれば、原告は、被告らが任意に右損害の支払いをしないため、その賠償請求をするため、原告代理人に本件訴訟の提起及びその遂行を依頼したことが認められ、本件事故と相当因果関係がある弁護士費用としては三〇万円が相当である。

6  合計 三九五万二一七五円

三  被告らは、原告に提供した代車の平成四年一月三一日までの代車費用のうち、一か月分を除いた残額四一万八七二六円は原告が負担すべきものであり、本件賠償額からこれを控除すべきであると主張するが、証人野村仁の証言及び原告本人尋問の結果によれば、少くとも平成四年一月三一日までの原告の代車使用については了解があつたものと認められるので、被告らの右主張は失当である。

四  以上のとおり、原告の本訴請求は、被告らに対し、三九五万二一七五円及びこれに対する本件事故の日である平成三年一一月二一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから、これを認容するが、その余は理由がないので棄却することとし、訴訟費用については民事訴訟法八九条、九三条、九二条を、仮執行宣言については同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 大橋英夫)

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